C線のハイポジションがきれいに鳴りません

2020年8月15日

「C線のハイポジションで、「ボウワウ」と、しまりのない芯のない音が出てくるのです。もちろんウルフではありません。弓の圧力、スピード、左手指の押え圧など色々替えてみるのですがうまくいきません」

というお悩みが寄せられました。

Ⅽ線はそれでなくても発音しにくいのに、その上にハイポジションとなるとさらにむずかしいものです。でも、ハイポジションを弾くようになるとこれは避けて通れないですね。ではこんなときどうすればいいでしょうね。

チェロはどの弦を弾く場合も、弓を動かす直前に弓でしっかり弦を掴みますが、Ⅽ線はファーストポジションでさえ他の弦に比べて掴むのが格段に難しく、C線らしい音を出すには右の手、指、腕の チカラ右の指から肩甲骨までのすべての関節の柔軟性に加え、腹筋、背筋、体幹のチカラも必要です。

というとあまりにも漠然としていてどこから直せばいいのか途方に暮れるかと思いますので、こんなときにいくつか、まずお試しいただけそうなポイントを次に挙げてみます。

1.弓を持つ指の関節を柔らかくする

発音直前の弓のひっかかり(弦を掴む)から音が立ち上がるまでのポイントです。Ⅽ線に見合った深さでしっかり弦を掴んだ後、弓を持つ指の関節をカチカチにしないようにします。(でもヤワヤワでも圧力に耐えられません。指の関節は極力柔らかくして、その代わりに手のひらの内側にできる「くぼみ」で圧力に耐える感じです)。

 

2.腕全体で「腕立て伏せ」をするように、弦に体の重みをかける

この時、背中を丸めたり、楽器の上に頭を下げて楽器の上からのしかかったり、肘を上げて弦を上からチカラで押し付けたりしないようにしてください。腕で突っ張って上半身を弦から引き離すことで体の重みが弦にかかります。詳細はこちら>>

この時、楽器を裏から胸(楽器と体との接点)でしっかり支えます。詳細はこちら>>鳴らせない方の場合、この「支え」がたいてい全く足りていません。この支えには腹筋と背筋=体幹のチカラがかなり必要です。

 

3.音の立ち上がり直後の弓のスピードはゆっくり

Ⅽ線の時の弓は深くゆっくりしか動きません。加えて、ハイポジションでは下のポジションの時より駒の近くを弾くことになりますから、さらに弓の動きは「ねっとり」しています。

この弓自身が自分で行きたがるスピードを無視した速さで弓を動かすと、たいていの場合音がかすれます。

Ⅽ線上を動く弓自身が行こうとする速さより速い弓では、よほど圧力をかけ続けることができないと、浅いところをこすってしまうからです。適切に圧力をかけ適切な深さに留まっていることができると、適切な弓のスピードは弓が教えてくれます。関連はこちら>>

初心者のかたでⅭ線の発音が難しい場合、止まっていた弓が動き始めた直後の弓のスピードがたいてい速すぎます。しっかりこすろうとして弓を勢いよく速く大きく動かしたくなるようです。特にハイポジションではこのことにいっそう気をつけてください。

例えば、大型タンクローリーが信号で止まっていたとします。青信号になって再び動き始めるときのこのタンクローリーのタイヤの動きを想像して下さい。

タンクローリーは軽自動車のように一気に飛び出すことはできません。重い車体の圧力を地面に伝えながら、1ミリ・1ミリ地面をしっかり押しながら動き出しますね。Ⅽ線でもこれと同じように弓が1ミリ・1ミリ動いて弦を振動させていきます。

 

4.体全体を使って弾く

腕だけで弓を動かそうとしないで、体全体を使ってください。特に腰から下の体重移動が弓に推進力を与えるつもりで弾いてください。弓を動かすモーターを下半身に感じてください。

下半身にあるモーター「が」肩甲骨から先「を」動かします。実はこれは、チェロのボーイングの基本です。Ⅽ線が上手に鳴らせるということはこの基本がちゃんとできているということです。

C線ではしっかり足を踏ん張ってくださいね。 そう言えば、私も学生のころ先生から、「お尻で弾くんだよ」とか「男の子みたいに弾くんだよ」とか言われてました。

 

5.弦の種類に応じてよって弾き方を変える

チェロは4本の弦とも、その上を動く弓のスピードや深さが違います。また、それぞれの弦においても弓で弾く場所が指板寄りか駒寄りかでも違いますし、下のポジションかハイポジションかでも違います。

反対に言うと、それぞれを弾き分けられないといつもどこを弾いてもいい音がするように弾くのは難しいということです。

 

6.移弦のテクニック

この「Ⅽ線の発音の難しさ」を強く感じるのは、ずっとⅭ線を弾き続けているときより、他の弦からⅭ線に移弦してきた直後の最初の1音目の時です。それには正確な移弦のテクニックも必要になってくるからです。

移弦とはただ単に違う弦をこすればいいというものではなく、正確にマスターしていただきたいとても大切なテクニックです。移弦が正確にできると、どなたでも格段に音が良くなります。師事されている先生からしっかり教えていただいてください。

実際のところ、アマチュアのかたで移弦のテクニックをきっちり時間をかけて習ったことのある方は少ないように思います。とても残念です。