もっとカッコイイ音で弾きたい【その1】自分の音が飛んでいくその先を聴きましょう

2020年1月8日

アンサンブルのチェロパート。曲も終盤にさしかかりやっと出てきたチェロのメロディライン。ここぞという時にとっておきのカッコイイ音で弾きたい。

でも、なかなかこれが思うようにはいきません。頑張って大きな音で弾いているのに指揮者や他のパートのひとから「チェロ、音が小さい」とか「私たちはこれ以上伴奏の音を小さくできません」とか言われてしまいます。

今回は「音量と音質」をレベルアップしたい方へのアドバイスです。 

ところで、皆さんは一人でチェロを練習するとき、目は楽譜を見ていますね。では、耳は?

もちろん、あなたのチェロから出てくる音を聴いていると思います。

また、練習している場所はたいてい狭い部屋の中ですね。残響の少ない狭い部屋で弾いているとついついあなたのチェロから出てくる音をダイレクトに聴いてしまいます。

つまり、楽器からたかだか50センチくらい離れたところの音を聴いていることになります。

楽器から50センチ離れたところで聞こえる「楽器のすぐそばの音」がいくら大きくても、その音は残念ながらお客様のところにまでは飛んでいってはいないことが多いのです。

そういうのを「そば鳴りがする」といいます。奏者の耳の側では大きな音がするのですが、「うるさい、響かない、汚い音」で、遠くにまで届きません。

では、客席で聴いている人のところまで届くカッコイイ音はどうすれば出るのでしょうか。

今回は、まだ難しい弓のテクニックはお持ちではない初心者のかたにでもすぐお試しいただける方法をひとつご紹介したいと思います。

大きな音とはよく響く遠くまで届く音です。大切なのは「音の響き」です。まず、これを出すための「耳」を作っていきましょう。 

1. 今あなたは大きなホールの舞台にいて、客席の方を向いて座っていると思ってください。

実際は狭い練習室にいても想像はできますね。

2. 目は舞台から一番遠いところにある3階席の客席の一つを見ます。(見ているつもり)

 遠いところの音を聴こうとすると、目も自然とそちらを見ますね。楽譜から目を離して3階の客席を見てください。(実際に今あなたがいる練習室の壁の向こうを透視するつもりで)

 大きなホールの舞台に立ったことのない方は、自分が今までに経験したなかで一番ステキな奥行きのある景色を思い出してください。学校の体育館や運動場などの広いところ。

アウトドア派のかたなら、白浜の三段壁の前に広がる真っ青な太平洋、夜空にまたたく星座でも素敵ですね。(私もこっち派かな)見ていると自然に笑顔になれるようなところを想像しましょう。 

3. 耳はその「3階席のお客様」のところ、青い海のかなた、またたく星座・・まで飛んでいこうとしているあなたのチェロの音を聴いてください。

今あなたの楽器から出てきている音をそのままダイレクトに聴いてはだめです。近い音を聴いていると不思議と出る音に伸びがなくなり、うるさいだけの「そば鳴り」している状態になります。

・ ホールの一番奥、海の向こう、宇宙・・から跳ね返ってくるあなたのチェロの音を聴くつもりで。

・ 耳を「パラボラアンテナ」や「ウサギちゃんの耳」にして跳ね返ってくる音に焦点を合わせます。

・ 我家の練習室に居ながら、隣の家の中にいる人の会話を耳をそばだてて聞いているつもり。

 4. 体は、「正しい土台」を作ってください。

丹田に力を入れ、上体を上に伸ばし、胸を開いて、顔を上げます。「口角」を上げて「いい笑顔」を作ると、もっと気持ちが明るくなります。気持ちが明るくなると、心が落ち着き、余計なチカラが抜けて、楽器が鳴ります。

あちこちに注意を向けると反対に体が固まってしまう方は、この際いろいろ考えずに、ただ「かずが」になってみてください。ピンク色のベストの、あのお笑い芸人「オードリーの春日」になったつもりでどうぞ。

5. 実際にこの状態でチェロを弾いてみましょう。

圧力をかけてガリガリこすり「大きな音」を出そうと頑張るイメージではなく、さらにもっと響かすことで「ふくよかな音」にするイメージです。下半身も使って体全体で、音を「前に」「自分の目で見ている方向に」「呼びかけるように」軽くどんどん飛ばします。

ちなみに、この時私は「弓に空気を含ませている感じ」がしています。(ひとによって、自分だけに分かるイメージがあると思います)

遠くまで届く音が出ているときは、実際には自分の周りでは意外と小さな音しか聞こえてきません。でも客席にはちゃんと届いています。

大きな音、くっきりした音を出すにはもちろん「右手」にも「左手」にも「体の使い方」にももっともっとコツがあります。初心者でも使えるワザを次回も取り上げます。お楽しみに。