もっとカッコイイ音で弾きたい【その2】弦のどこを弾いているか意識する
前回は遠くに音を飛ばす事ができる「耳」についてお話ししました。こちら>>
今回は「弦のどこを弓で弾いているか意識する」がテーマです。
弓が擦っている弦の場所に気をつけると、音質がとっても良くなります。
初めてチェロの弦を弓で弾くことを習ったときはたぶん「”駒”と”指板の端っこ”とのちょうど真ん中を弾きましょう」と習ったと思います。
どんなに左手が難しくなってきても、弓はいつも同じところをまっすぐに動かすのが第一ミッションですよ~と言われましたよね。
さて、少し弾けるようになってきて、自分の出す音の音質をレベルアップしたくなってきたら第二のミッションに挑戦しましょう。
第二のミッションは、
各弦それぞれ、音の大きさや欲しい音質によって、弓で擦る場所を意識的に変えましょう
ということです。
と急に言われてもどうやって?ですよね。
というわけで、まずは思いっきり駒の近くを弾く練習をしてみましょう。
初心者のかたは気を抜くとすぐに指板の近くを弾いてしまいます。でも指板の近くはいくら弓に圧力をかけてもそのチカラを弦が受け止めることができません。
指板近くを擦っている限り大きな音やパリッとした音は出せないわけです。
まだ圧力のかけ方に不慣れな初心者の方にとっては駒のすぐ側を弾くのは大変難しいのですが、これができるようになると音がとっても良くなるのでトライしてみてくださいね。
それでは、練習の仕方を説明していきます。
どの弦でもいいのですが、細い弦のほうがより簡単です。開放弦の駒から1 cm ~ 1.5 cm ぐらい離れたところを弓元で弾きます。
たいていの場合、弦を振動させることすらできないと思います。あまりにも手に負えない感じだったら、駒から2 cmぐらい離れたところで練習し始めてもOKです。コツが分かったら思いっきり駒の近くに寄せていきましょう。
弦を振動させるコツは、弓をとってもゆっくり動かすことです。弦の太さにもよりますが秒速 2 ~ 3 cmというところでしょうか。
また、弾く前に弓を弦にしっかり深く密着させることも重要です。
弦が弓の圧力に反発するチカラはとっても大きいです。弓を持つ右手が弦の表面にはじき返されるような感じがしますが、右手を正しく構え、体幹を使ってしっかり圧力をかけます。
とってもしんどいですが、肩に力を入れて人差し指で弓を押さえつけてはいけません。右手の平で作るドームの形が崩れないように。
コツがつかめると、実はそれほど力を入れなくても振動させ続けることができることがわかります。
弦から伝わってくる振動をキャッチするために、右の指の関節はできるだけ柔らかくしてください。親指もしっかり曲げて関節を固めないように。
スキーのモーグルの選手の膝を思い出してください。膝の柔らかさでどんな衝撃も吸収できるのに、大きな圧力にも耐えますね。
「弓を弦の上にセットした時の摩擦力」より「弓がダウンの方向に動こうとする力」の方が勝った時に、弓は右に動き始めます。動き始めると弦の表面に弾き飛ばされそうになるので、それに抵抗するように弦の深いところを擦り続けます。一度でも圧力を緩めると弦の振動は止まってしまいます。
よくある失敗
・解放弦の音程ではなく「ヒュ~」という高い音がしてしまう
→ 弦にかける圧力が足りていません。弓のスピードが速すぎるときもこうなります。
・弓が動き出しはするのですが途中で引っかかって「ブリッ、ブリッ」と音がとぎれとぎれになる
→ いい感じで圧力がかかってはいるのですが、その圧力の割には弓の動かし方が遅い。しっかり圧力がかかって弦のとっても深いところを掴んでいるときは弓が動きにくく感じられます。畑の深いところにシャベルを突き刺して、そのままの深さを維持しながら溝を掘り続けているのと同じです。深いところを掴んでいるときはゆっくりゆっくりしか動きませんが、前進し続けないと弦の表面に弾き飛ばされてしまいます。
・駒から2 cmぐらい離れたところで練習しているのに弦がきれいに振動してくれない
→ 圧力や弓の速さを工夫しても難しい場合もあるかもしれませんね。特に太い弦は駒の近くを弾いて弦を振動させるのが難しいです。より細い弦で、3cmぐらい離したところで試してみて下さい。
他に考えられる鳴らない原因がもう一つ。あなたの楽器のコンディションの問題です。
ひょっとしたら、あなたの楽器はいままでその場所を弾いてもらったことが一度もなかったのでは?いつも指板の近くをスイスイと、弦の表面をなでるような弾き方しかしてもらっていなかった楽器なのでは?
この機会に駒の近くをねっとりと弾いてあげてください。すこしづつ楽器が鳴るようになってきます。必ず鳴ってきます。ご自分の楽器を育てていってくださいね。
最後に、駒の近くを弾いても弦をきれいに振動させることができるようになったら試しに、駒の近くを弾く時の「圧力のかけ方」と「弓運び」と同じ要領で、今度は指板の上を弾いてみてください。
弦がフワフワするだけで、かけた圧力を受け止めてくれないのがよくわかると思います。これでは指板の近くでは大きな音やくっきりした音がだせないわけですね。