弓をまっすぐ動かす練習【その1】まず、弓をまっすぐに動かせるフォームを身につけましょう

2019年8月23日

「弓が曲がってますっ!」

「指板に寄りすぎですっ!」

「指板と駒の間をあちこち弾いてますっ!」

「はいはい、もう何度もレッスンで指摘されて分かってるんです。でも鏡に映してもどう曲がっているのかイマイチぴんとこないし、一度ついたクセが取れません。。。。」

 

そうですねぇ。

 

まっすぐに動かすというと初心者のみなさんは「弓が動く軌道」にばかりに気を取られがちですが、本当はその前に、「弓をまっすぐ動かすことができるフォーム」を身につけることの方が大切です。 

具体的にいうと、「肩の可動域」を広げるということです。

特に「全弓で弓がまっすぐに動かない」というお悩みをお持ちの方を拝見すると、フォームが悪くて弓先で手が届かず弓が曲がってしまうようです。

「弓先」は、もともと肩幅の狭い女性や普段から肩の可動域の狭い方では手が届きにくいので「弓をまっすぐに動かす」という動作は難しくなります。

「弓をまっすぐに動かす」シリーズの第一回目として、今回は「肩の可動域」を広げ、余裕をもって弓先まで弾けるようなフォームを身につけていきましょう。

 

弓をまっすぐ動かそうとして「腕」や「手首」の使い方に気を取られがちですが、じつは足の裏から肩までの使い方もとっても大切です。

「弓先」で大きな音を出すのが苦手、弓先での弓の方向転換で音が途切れる、音がかすれる、などに心当たりがある方は体幹を上手に使うことを覚えてください。

チェロは腕力だけで弾くのではありません。

体幹が上手に使えると、肩幅が狭くそんなに力自慢ではなくても必ずきれいに良く響く音が出せるようになります。

 

さて、「弓を全弓でまっすぐに動かす」ときに使う体の部分は大きく2つに分かれます。

1. 胴体(体幹)

2. 肩から先(腕と手)

 

今回は、1.の体幹の使い方を練習しましょう。 

今回ご紹介するのは、丹田に力を入れつつ胸を開く練習です。立ってでも座ってでもできますよ。

1. 壁が自分の右にあるように、壁から30センチほど離れます。

2. 丹田に力を入れておしりを締めます。

丹田はおへその下。超きついジーンズの前のファスナーを無理やり閉めようとおへその下をキューっと引っ込める感じです。自分を細くスリムに見せようとおへそやお腹全体を引っ込めるのではありません。

 

3. 丹田に力を入れつつ、その丹田の支えを使って腰を思いっきり高く引っ張り上げるつもりで上半身をまっすぐに立てます。

おへそと胸の距離をできるだけ離そうとしてみてください。(インナーマッスルですよ~)

「座高」を高くしようとしてはいけません。座高を高くしようとすると首や肩に力が入ってしまいます。正しい肩と首はリラックスして体幹の上にチョコンと乗っているだけです。

4. あごでリンゴを挟むつもりであごを引きます。

でも喉とあごの力は抜きます。

5. 前方に目をやります。

にらみつけないで、リラックスしてください。

6. 肩甲骨を下げて寄せ、胸を緩めて広げます。

この動きに限りませんが、広げたり伸ばしたりするときは力を抜きながらします。首にかけた素敵なネックレスを前につきだして見せびらかす感じ。あごを引いてちょっと「ええカッコしい」になってください。

7. 自然に肩が後ろに引けて、ぶらんとぶら下がっている両腕の中指が体の真横に来ます。

ここまでの体幹の使い方は、チェロだけでなくいろいろなスポーツでも同じです。ですから、スポーツ経験者ならその競技の基礎を思い出してみてください。「ははぁん、あれと同じだわ」と思うと思います。

8. ここまで体を作っておいてから、右肘を体側につけたまま右の前腕を地面と平行よりすこしだけ高めに持ち上げるように曲げます。

手首から先は下に向けてお化けの手みたいにしても、弓を持っている形にしてもいいでしょう。

9. 「肘を手首の高さよりすこし下げたフォーム」と「肘と床の距離」を保ったまま腕を横に開いていきます。

前腕は常に自分の体の右にある壁と平行を保ちながら開きます。肘が手より先行するつもりでするとうまくできます。

10. これ以上広げると肘が上がってきてしまう位置までを何度も練習してみてください。

腕を広げるときは「丹田」→「腰高」→「胸の広がり」→「腕が右に押し出される」という連携プレーです。

そしてこの動きの波はいつもまず丹田から始まります。そして体の端へ順に伝わっていきます。伝わってきた波が最後の最後に腕を右に押し広げます。ダウン弓は決して腕だけを動かしているのではありません。

11. この動きに慣れてきたら、右腕をさらに広げてみましょう。

体はまっすぐ立てたままです。右の胸(首の付け根)がぐうっと引き伸ばされます。肘は無理矢理にでも真下に下げ続けようとしますが、肩に力を入れてはいけません。 肩で上から肘を押し下げると首の付け根や肩に力が入ってしまいます。

背中と脇の下(体の側面)の筋肉を使って脇の下(体側)を固くするようにして肘を垂直に引っ張り下げながら1センチでも遠くに広げます。

わかりにくかったら、さらにもっと丹田に力を入れ腰を高くし胸を開いてみてください。

 

注意:

 1. 肘を下げることに気を取られすぎると右肩が下がったり、体が傾いたりします。体はあくまでもまっすぐに立てたままです。右腕を横に動かすときは肘が常に地面から同じ高さのライン上を動くように。

2. 右に大きく広げるにつれ肘が上がってきそうになりますが 肘をグイッと下に押し下げつづけようとしてください。コツは、さらに丹田で下半身を支えもっと胸を開いて肩を後ろに引き胸のネックレスを見せびらかすことです。

 

この正しい腕の開き方が分かってきたら、今度は試しにこの動きを背中を丸めて「超猫背」で同じようにやってみてください。

すると、肩の動きが悪いのがおわかりになりますか。肩関節がうまく動けず、肘が開いていきませんね。おまけに首に力が入ってしまいます。

 

 次に「超猫背」を止めて体を立て直し、先ほどのやり方でもう一度肘を開いていましょう。

今度はずっと楽に腕が動きませんか。 

胸が開いていることが肘を動かすのにどれだけ大切か分かっていただけましたでしょうか。

 

(小さい声で言いますが)この動きは、トイレでもこっそり練習できます。座っているときに体を動かさずに右横の壁に「肘だけ」をつけにいきます。(我が家のトイレは狭いのでこの練習にぴったりです。。)

次にトイレに入ったときにぜひこっそり練習してみてくださいね。

ということで、「弓をまっすぐに動かすことができるフォーム」がわかったところで、次回から実際に弓を動かす練習をご紹介します。次へ (弓をまっすぐ動かす練習【その2】弓の真ん中~弓先近く)>>