はじめてのボーイング【その5】弾き終わりは弓を止めて次の音への準備をします
今回は、「はじめてのボーイング」の第5回です。(一回目はこちら>>)
今回のテーマは:「準備(せ~の~)」
これから何か別の違った動作をする時には、必ずその一つ前のタイミングで準備するということです。今回でいうと、ダウン方向からアップ方向に弓の向きを変えるための準備動作です。
以前にお話しした「音符を弾き始める前に、無音でカウントを始め、その波に乗って弾き始める」というテクニック(こちら>>)も「弓を動かす」という動作への「準備」ですね。
弾く前には「せ~の~」と自分で自分に掛け声をかけて体を準備します。準備動作無しで急に新しい動きを始めると、息が止まったり体が固まってしまい、動きが柔らかくなりませんし、素早い動きもできません。
初心者の皆さんだけでなく、プロでも「どうもうまくいかない動作」というのが曲の中にいろいろありますが、その原因が事前準備が不十分だったからということがよくあるんです。
さて、今回までの「はじめてのボーイング」をざっくりおさらいすると:
1. これから弾く弦の上に 弓を軽く置いたまま、実際に音を出す前に心の中で、これから弾きたい速さでカウントを始め、
2. 1つ目の音の直前の拍の「と」のタイミングで弓を弦にピタッとつけて、弓と弦がピタっと張り付いた感触に気持ちを集中させ
3. 音を出す直前の「お」のタイミングで、弾きたい弦に見合った深さに弓を沈みこませます。
ここまでの1.2.3.が弾くという動作への事前準備、(楽譜には書かれていない)無音での弓のセットのしかたです。
4. 楽譜に書かれている最初の音の拍の「い」のタイミングで、いよいよ弓がスタートすると「アタマのある音」がすっきり立ち上がりました。弓の当初からの深さをしっかりキープしながら弦を振動させ続け音の芯を作ります。
(※注)このとき「ガリガリっ」と音が潰れるのは今はかまいません。次の「ち」で圧力が減ると音がきれいに鳴ります。
5. 「ち」のタイミングで、弓を少し浮かし気味にしながら、すう~っと流すように動かし、音の芯の周りに「響き」を作ります。
ここからが今回の「アップ弓への準備動作」です。
6. 「と」のタイミングで、弓をその場でピタッと止め、弓と弦の接点に気持ちを集中させます。
7. 「お」のタイミングで、「次のアップ弓でその弦を発音させるのに最適な深さ」まで弓を沈みこませます。この動作を「弓で弦を掴む」と表現することもあります。
(※注1)
「と」から「お」に移るタイミングでは、弓はその場に止まったままなので、「お」でどんなに弓に圧力を加えてもガリッという雑音はしません。
今回の例はずっと同じ弦の上を弓が行ったり来たりしていますがこの他に、弾く弦を他の弦に移る「移弦」というテクニックがあります。この「移弦」の時に雑音がするのは、この「と」から「お」のタイミングで弦を移る時に、圧力のかかった弓が弦の上で微妙に左右に動いてしまっているからです。弓に圧力をかけるときは、事前に弓が弦の上で止まっていなければなりません。(移弦の練習方法はまたいずれ。。)
(※注2)
「アップ弓」の最初の音をはっきり発音したい気持ちから、アップ弓を「弾き始めるのと同じタイミング」で弓にもう一度圧力をかけなおしてしまう方があります。この方たちの場合、ダウン弓の最後のタイミング(「い・ち・と・お」の「と・お」のタイミング カウント方法についてはこちら>>)では「弓が弦の上に軽く乗っているだけ」になってしまっていることが多いです。
もしダウン弓の音の尻尾を軽くふわっと消えるように響かせたとしても、その消え入るような音の最後には弓を止めてから弦の中に沈みこませ、次の「アップ弓」への準備をしてください。
(※注3)
四分音符だけが並んでいる譜面でも(楽譜に休符が書かれていなくても)実際に音が鳴っているのは
「い」と「ち」のときだけで音の長さの後ろ半分「と」と「お」の時は弓が左右に動かないので、実際は音が出ません。休符が入っているように聞こえることになりますが、この練習をしているときはこれで正解です。こちらも参考に>>
今後この隙間を減らしていく練習をしていきます。