はじめてのボーイング【その2】弓を動かす前に曲のテンポを感じましょう

2021年5月3日

今回は、「はじめてのボーイング」の第2回です。(一回目はこちら>>

ところで皆さん、曲の弾き始めってどうしてます?
えっ、そんなの考えたことない?
ひょっとして、緊張して呼吸が止まってませんか?

チェロを始めたばかりの方はどんな音を目指していただきたいかを前回(こちら>>)お話ししましたが、次はその実技編にいきましょう。

今回は、以前ご紹介したいろいろな拍の数え方のうちの、「1つの四分音符を4分割して数える数え方 い・ち・と・お に・い・と・お さ・ん・と・お」を使って、「と」「お」の部分を「感じる」練習をします。  

拍の数え方の説明はこちら>>

 実際に弓で音を出す前の心の準備として、これから弾こうとする曲の拍動を体の中に予め感じる練習です。(えぇっ、今回もまだ弾かせてくれないの?!。。。ハイ!)

チェロをいままで触ったことのなかった全くの初心者は、ダンスの振り付けを覚えるように、それぞれの動作を何となくではなく意識して拍動に合わせて弾くことから始めましょう。

初めはかなりカクカクした動きに思えますが、慣れてくると角がとれてきて流れるような自然な動きになり、考えなくても体が勝手にやってくれるようになります。その時にはすきっと音が立ち上がる、クリアな音が立派に出せるようになっています。楽しみですね。

さて皆さん、冒頭の質問「曲の弾き始めってどうしてます?」に戻りますね。

初心者のかたの中には、緊張して弾き初めに息が止まってしまっている方があります。(息のしかたについてはまたの機会に)

さらにそれ以前の問題として、これから弾く曲のテンポが予め感じられていない方もよくあります。

とりあえず弾き始めるけれど、メトロノームが傍で鳴っていないと速くなったり遅くなったりしてしまう方。

一つ目の音がいつもかすれるので、いい音が出てくるまで何度も何度も弾きなおす事がクセになってしまっている方。

今回は特にそんな「出たとこ勝負型」の方には抜群の特効薬です。

ところで、曲やフレーズはある時突然始まるのではありません。音が生まれ出てくる前のまだ何もない空間に無音の音楽が流れ始め、そこに「音」が次々乗って出てくる感じです。

例えば、昔、レコードの時代、レコード盤の上に針を落とすと、音楽が鳴り始める前に、「プチプチ」「ザー」と音がしました。音楽が鳴り始める前のちょっとした心地よい期待感に満ちた前置きでした。

もっと簡単に言えば、曲を弾き始める前の「せ~の~」という掛け声から音楽は始まっているのです。オーケストラの指揮者が曲の出だしを合わせるために「せ~の~」と合図をするあれです。

でも、本当にお客さんの前で「せ~の~」と大声で掛け声をかけるわけにはいかないので、指揮棒や目くばせや息づかいを使って、これから演奏する曲のテンポや音楽の雰囲気を示します。

これと同じことをチェロを弾く時はいつもやってくださいね。たとえそれが単なる四分音符の練習の時でもです。

 

< 四分音符を弾く前に予めテンポを「感じる」練習 >

1. 指揮者になったつもりでこれから弾く四分音符を予め心の中に鳴らします

2. 自分が四分音符をチェロで弾いているその時の筋肉の動き、関節の動き、手に受ける圧力などをリアルにイメージします。 

3. 自分の楽器がどんな音色の音でどんな速さで鳴っているかを自分の手や体でリアルに感じられたら、次のように、その速さで口でテンポを唱えます。今回は下のイラストのように「一つの四分音符を4つに分割する唱え方」を使います。 

この時、あまり速い四分音符を想定すると、「いちとお にいとお・・」がとても早口になってしまい、一つ一つの語のタイミングが意識できないようになってしまいますので、一つの四分音符に2秒ぐらいかけるような、ゆ~っくりしたテンポを設定します。

4. その四分音符のきたい速さと雰囲気を指揮者になったつもりで自分の体に合図を出します。この時、なんとなく「せ~の~」と合図を出すのではなくて、実際に音を出す小節の直前に無音の小節が1小節あるつもりで、その無音の小節から「いちとお にいとお さんとお」と唱え始めます。

実際に音がでる直前の「と」と「お」を特に意識して、この2つを自分の体に合図してください。(上のイラストでは、無音の小節のカウントを青字で、音が出る直前の大切な「と」「お」から後を黒字で示しました。)

5. その「無音の1小節」の流れに乗って、楽譜に書いてある音を弾き始めます。弾きながらもずっとカウントし続けます。

次回はいよいよ、弓を持っての練習をしましょう。