左指で弦に圧力をかける【その7】左指「1」の指の痛くない押さえ方
今回は、「左指で弦に圧力をかける」の第7回です。(1回目はこちら>>)
「えっ、チェロの弦ってこんなに痛いんですか」って、あなたも初め思いませんでしたか?
特に「1」の指(人差し指)一本で弦を押さえるのって 指が痛くてたいへんですよね。
今回はそんな方に、少しのチカラを効率よく使って痛くないのに弦をしっかり押さえることができるコツです。
また、チカラ自慢の方で、初めから指一本で弦を押さえられた方も、正しい方法で弦を押さえることができたら、もっと楽に、そしてもっと速く指が動くようになります。
さて前回、弦を指板につけ音程を作る動作を、左手の掌の内側のくぼみと体幹とで楽器を挟むことで行うとご説明しました。こちら>>
弦を指板に押しつけているのは実際には指先なのですが、その指が圧力に耐えかねてぐらぐらしていると手の中のくぼみがつぶれます。
その結果、指先の力だけで弦を押さえることになり、指が痛いほど頑張っているのに現にかかる圧力が不十分ということになります。手のくぼみをいかに保つかが弦をしっかり押さえるカギになるのです。
手の大きな方は、弦を十分に押さえることについてそんなに困ることはないと思うのですが、手が小さい方の場合は「1の指(人差し指)」は下の写真のように少し倒れて、指先の親指側の横のところで押さえています。
手の大きな方でも、ファーストポジションの拡張型の時は人差し指だけ伸ばしますので、指の横で弦を押さえることになります。
このような場合の人差し指はとても不安定ですね。
1.2.3.4.の四本指全部使って弦を押すことができる時は他の強い指も手伝ってくれているので、手の中のくぼみはとても安定して保てますが、 押さえる指が「1」だけの時は、くぼみを不安定な指一本で支えることになります。
下の写真は、人差し指の付け根(第三関節)が圧力に耐えきれずに人差し指全体が倒れてしまった例です。
こうなると手のひらの内側のくぼみはなくなってしまっていて、弦を押すには指先のチカラだけに頼るしかありませんので指先はとっても痛いです。また、こうなってしまうと、親指も使って指板を握ることで弦を押すという悪い動作につながります。
親指のどこがネックに触れているかも気をつけてください。この悪い例では親指の指先の腹側の真ん中あたりが触れています。さらに、親指が伸びてチカラが入って反っくり返っていることもあります。
手のひらの内側のくぼみは、指板の方を向かずに奏者の前方に向いてしまっています。
こうなると、ここには写っていませんが肘が下がったり、このフォームのままで無理に肘を上げようとすると、手首が折れ曲がります。
こちらは良い例です。
人差し指は「横押さえ」状態ですが弦を押さえつけようとしていません。その曲がり具合をしっかりキープしているだけで、弦の上にバランス良く立って、手全体を支えています。
この写真では、1.2.3.4.全ての指を押さえているように見えるかもしれませんが実際は「1.」だけ押さえて他の2.3.4.の指は上がっています。他の2.3.4.の指が、使われていないときも自分の持ち場を離れず、ただ弦の真上に浮くようにしているから人差し指一本でこの手の形をキープできるのです。
さらに親指にも注目してください。親指のどこがネックに触れているかというと、親指の先の人差し指側の角です。爪も当たっているかもしれません。また、親指は力まず自然に曲がっています。チカラを入れず、ポジションの目安としてネックに触れているだけです。
肩甲骨から手のひらのくぼみまでが一つの大きな「左の土台」です。
この土台全体が体幹の引力で体幹のほうに常に引きつけられていることにより、その先に付いている指が弦の中に沈み込んでいる。どの指を上げようと下げようと、土台はいつも安定してぐらつきません。手のひらの内側のくぼみの形が、どの指を使っているときも同じようになるように気をつけてみてください。
手の小さい方ばかりでなく手の大きい方も、 手のひらのくぼみを意識して指一本一本の負担を減らすことにより、指が自由になり、速く動かすことができるようになります。