左指で弦に圧力をかける【その2】チェロの左腕と斜め懸垂との共通点は、肘から曲げようとしないということです

2020年8月15日

今回は、「左指で弦に圧力をかける」の第2回です。(1回目はこちら>>

弦を押さえるときは「斜め懸垂の要領で」というお話を前回しました。

 「でも、チェロってスポーツではありませんし。。」「私、スポーツ苦手なんです」という声がどこからか聞こえてきそうですが、メロディの歌い方など音楽的な要素は別として、楽器を弾くという動作だけからみれば、チェロ演奏もスポーツも体をいかに上手に使うかという点では同じですね。

手が小さかったり、体が小さかったり、チカラがそれほどなかったりする方でも、体の使い方をちょっと意識するだけで、効率よく楽器にチカラをかけることができるので良く響く音でチェロが弾けます。もともと体格にハンディがない方なら演奏が今よりもっと楽になりますよ。

さて、腕を使って重りを動かすトレーニングには、斜め懸垂の他にも、重いバーを持ち上げたり、頭上のバーを引き下ろしたり、両腕を広げたり閉じたりなどいろいろありますね。目下、筋トレに励んでいらっしゃる方にはお馴染みだと思います。

こんな筋トレをするときの注意点として、トレーナーから必ず指摘されるのが次のポイントですね。

1. 「トレーニング動作に入る前にまず、肩甲骨を寄せて、胸をはった状態を作ります」

2. 「腕を動かしているときはずっとこの「肩甲骨を寄せて、胸をはった状態」をキープしてください」

3. 「背中がゆるんだ状態ではチカラが出ませんよ。腕の曲げ伸ばしだけでやってはダメですよ」

 このポイントを具体的に先ほどの斜め懸垂の場合でいうと、肘を曲げることによってバーを体に引き寄せるのではなく、「肩甲骨を寄せた背中と広げた胸」のほうからバーに近寄っていく、体が持ち上がっていくイメージです。

背中のトレーニングだからということもありますが、実際にやってみると、肩甲骨を寄せてから腕を動かすと、寄せない時よりもずっとパワーが出ます。これは反対に言うと、同じ負荷なら肩甲骨を寄せ続けた状態のほうが、より少ないチカラで腕の曲げ伸ばしができる=体と手の平との距離を縮めたり伸ばしたりできるということですね。

これを次回はいよいよチェロ演奏に応用してみましょう。

「腕の曲げ伸ばしの動作なのに、背中と胸を使う」というこのイメージが自分の体でわかっていないと、残念ながら斜め懸垂をチェロには応用できません。でも筋トレマシンが身近になくても大丈夫。公園の鉄棒や車止めの柵などを使う方法や、ダンベルやチューブのトレーニングなどでも同じことができます。

いろいろ試してみてください。ぜひこの斜め懸垂のイメージをつかんでくださいね。