右手をすばやく移弦するコツ【その1】低い弦から高い弦へ
今回は移弦についてのヒントです。その1回目として、「すばやく移弦するコツ」をとりあげましょう。
移弦のある速いパッセージを弾くとき、それも弦を1本または2本またいで移弦する時にモタモタしてしまう。。。なんか弾きにくい。。。
その原因はズバリ、移弦の動作が遅いのです。
この原因は左手にあることも、右手にあることもあるし、両手とも悪いこともあります。あらら。。。
では今回はまず、右手の動きを見直してみましょう。きっと今までより早く移弦ができるようになりますよ。
テニスを習ったことのある方なら、「手打ちになってはいけません」ということをコーチから指導されたことがあると思います。体幹が使えておらず腕だけでボールを打っている状態、これはダメですよ、ということです。
これは、チェロでも全く同じです。 初心者の方たちは腕だけで弾いていることが多いのです。手打ちならぬ、手弾きですね。
手弾きになっていると:
音に芯がなく、
音にパワーがなく、
音に響きがなく、
そのうえ、弓を扱う動作が遅くなります。
では、手弾きにならないようにするにはどうしたらよいのでしょうか。
これも、テニスと同じです。野球とも同じです。重心移動と体の回転運動を使います。体幹のねじれる勢いがその後、腕が移弦する動きを引き出します。
具体的に例をあげましょう。
例えば、下の弦から上の弦へ移弦する場合は:
1. 両足でしっかり床を捉えます。
2. 丹田(たんでん=おへその下あたり)に力をこめて上半身を下から支え、そのおかげで上半身がリラックスして肩甲骨が下がり胸が開きます。
3. 右足を蹴るようにして体重を左に移しながら、腰を左に回し始めます。(腕はまだ動きません。元の弦にいます。)
4. すると、腰の動きにつられて胸が左に向き始めます。(肩・腕はまだ動かず残っているので、胸が開きます)
5. 右肩が左側に向かい始めます。(肘はまだ動きません)
6. 最後の最後。ここまでの、「体幹が左へねじれながら回転しようとする力」が最後に腕に伝わって、腕が低い弦から高い弦へ移弦します。
ここで大切なことは、弓を持つ手先から移弦の動きを始めるのではなくて、チカラが足から腰に伝わってそれが上半身に伝わって最後に腕が動くということです。
くれぐれも床を蹴ったり腰を回したりするのと、腕が移弦するのとが同時にならないように気をつけてください。体が力んでガチガチに固まってしまうと、腰と腕が同時に動き出してしまいます。これでは体幹を使っているとは言えません。
移弦には体のしなりを使うということを覚えておいて下さいね。しなるということはつまり、足から順に上半身、腕、と少しづつ、遅れて動き出します。そして、このしなりを使うことで、より少ない力でより速く移弦できるのです。
この「しなり」を体験していただくために、私の教室では最初のレッスンで「象さんの鼻ぶらぶら」を練習をします。立って腰を前に曲げ、片腕を象さんの鼻のようにブラブラさせ、肩から振り子のように左右にゆっくり振ります。
そのとき腕をどうやって揺らすかというと、腕自体を左右に動かそうとするのではなく、足・腰・胸を大きく左右に揺らすことで、その先にぶら下がっている腕が勝手に揺れるようにします。これで、足、腰、胸、肩、腕が「大きく波打つように連動して動く感覚」を体に覚えさせます。
体を使うという点で、アスリートから学べることはたくさんあります。もし、スポーツ番組などでテクニックの解説をしていたら、そのテクニックがあなたのチェロの演奏に応用できないかと思いながら見てみてください。
びっくりするぐらい、チェロ演奏のテクニックとスポーツのテクニックは共通点がありますよ。