右手をすばやく移弦するコツ【その2】高い弦から低い弦へ
右手をすばやく移弦するコツ【その1】では「初心者の方たちは腕だけで弾いていることが多いのです」というお話をしました。
テニスで言うところの手打ちならぬ、手弾きにならないように ということでしたね。手弾きになると音に響きやパワーが足りなくなります。
こうならないためには、「重心移動と体の回転運動をもっと使いましょう」でしたね。体幹のねじれる勢いで、その後の腕が移弦する動きを引き出します。
前回は具体例として、下の弦から上の弦へ移弦する場合を考えました。ということで今回はその応用です。上の弦から下の弦へすばやく移弦してみましょう。
上の弦から下の弦への移弦のしかた
1. 両足でしっかり床を捉えます。
2. 丹田(たんでん=おへその下あたり)に力をこめて上半身を下から支え、そのおかげで上半身がリラックスして肩甲骨が下がり胸が開きます。
3. 左足を蹴るようにして体重を右に移しながら、腰を右に回し始めます。(腕はまだ動きません。元の弦にいます。)
4. すると、腰の動きにつられて胸が右に向き始めます。(左肩はまだ動かず残っているので、胸が開きます)
5. 左肩が体の右側に向かい始めます。(右肘はまだ動きません)
6. 最後の最後。ここまでの、「体幹が右へねじれながら回転しようとする力」が最後に腕に伝わって、溜められていた力が開放されるように一瞬で腕が高い弦から低い弦へ移弦します。
そして、この動きの注意点も前回と同じです。大切なので、ここにもう一度書きますね。
大切なことは、弓を持つ手先から移弦の動きを始めるのではなくて、移弦しようとする力が足から腰に伝わって、さらにそれが上半身に伝わって最後の最後に腕が動かされるということです。
床を蹴ったり腰を回したりするのと、腕が移弦するのとが同時にならないように気をつけてください。体が力んでガチガチに固まってしまうと、腰と腕が同時に動き出してしまいます。移弦には「体のしなり」を使うということを覚えておいて下さいね。
「しなる」ということはつまり、足から順に上半身、腕、と少しづつ遅れて動き出します。そして、この「しなり」を使うことで、「より少ない力でより速く」移弦できるのです。
上に記した「しなる動き」は、初心者のかたにもよくわかるように大げさに描写しました。
もちろん実際の演奏では「体重移動」や「しなり」はほんのちょっとで、外から見るとほとんどわからない程度のこともあります。でも、外からは見えていなくても、弾いている本人はこの体重移動やしなりを常に感じています。
この動きが少しわかってきたら一度試しに、肩から先(腕+手)を除く、体(頭から足先まで)をコンクリート製の銅像のようにゼッタイに動かさないで楽器を弾いてみてください。
下半身と上半身が「しならない」とどんなに弾きにくいかわかると思います。