弓を動かす前に、右指に「ねちっと」を感じましょう

2019年10月22日

初めてボーイングの練習をする時は音のアタマをすっきり立ち上げる練習から始めます。管楽器でいうとタンギングのついた音です。

弓を真っすぐ動かすことや大きな音を出すことやきれいな響きを作ることなどはまだ考えなくてけっこうです。これができるようになると、チューニングするのに必要なボーイングテクニックも身につきます。

ではアタマがすっきり立ち上がった音とはどんな音でしょうか。

みなさん、学校で習ったリコーダーやギターを思い出してください。

リコーダーで音を出すとき、くわえた口で「ふーふー」言いながら吹くのではなく、流れてきた息を「トゥートゥ」と舌を使うように教えてもらいましたね。

また、ギターを弾く時は弾こうとする弦を隣の弦に近づけるように指先をひっかけてからパッと離して音を出します。

リコーダーで「トゥートゥ」と言いながら音を出すときは、息はもう流れ始めているのに舌が邪魔して一瞬息が圧縮され、次に音を出すのに必要な空気のパワーが貯めこまれます。「ふーふー」言いながら吹くとこの息の貯めがないのでぼやけた音になります。

ギターの弦を弾くときは、音が出る直前に弾こうとする指が動いて弦が横に引っ張られ振動に必要なチカラが貯めこまれます。指先で弦をひっかけないで撫でるようにしても音は出ますが響きがでません。

ではチェロの場合は音が出る直前にどうしたら弦の振動に必要なチカラの貯めを作れるかというと、ギターの音を出す時と同じことを指先ではなく弓でやればいいのです。

つまりチェロの場合は、

弦の上に弓を腕の重みだけで置き、置かれた右手が重みはそのままでほんの数ミリ動き始めると弓が弦を同じ距離だけ横に引っ張ります。(この動作のことをよく弦を掴むといいます)

弦と弓の間には摩擦力があって弓が弦に張り付いたようになり弓自体はまだ動き出しません。これが弓が弦を掴んでいる状態です。この時、弓を持つ右手の指の皮膚になにかねちっとした感じが伝わります。

初めてボーイングの練習をする時に大切なことは、このねちっとした感じを音の出る直前にいつも感じるということです。

では、練習方法を次に説明していきます。

【1.   G線またはD線の上に軽~く弓を置きます。】

このとき気をつけるポイントは、

・両足裏とおしりの3点でからだを支える
・おへその下(丹田)に力を入れて上半身の重みを体幹で支える
・肩の力は抜く
・胸を開く
・肩甲骨を寄せて下げる
・肘は自然に垂らしておく
・腕の重みのすべてが弓にかからないようにする

などです。

コツは、腕を軽~く持ち上げ「おばけの手」みたいにすることです。(落語で「おばけ」といえばあのポーズですね)

「おばけ」肘は肩からぶら下がって、手のひらも だら~んと 手首からぶら下がっていますね。

肩で腕を持ち上げてはいけません。

お風呂で湯船に肩まで浸かって脱力すると、腕が勝手に水面までぷか~っと浮いていく、あの感じです。肩にはまったく力が入っていません。

腕を「おばけの手」のようにしたまま、手首は高いまま、弓を柔らかく持って、弓を弦の上にそぉ~っと置きます。

【2.   弓をその場でアップ、ダウンの方向に揺すります。】

実際に弓が動きだしてしまうのは揺すりすぎか、腕を浮かせすぎです。動き出す直前、ねちっとした摩擦を右手指関節や弓と接している皮膚表面に感じることでしょう。

 右手指の関節が固くブロックされていたり、親指に力が入っていたりするとこの感覚がわかりにくいです。

  弓と指の接点ができるだけ小さくなるように、「ちょうちょ」をそおっと優しく持つ感じです。

「なぁ~んや、こんなことかぁ~」と思うかもしれませんが、この「ねちっとした感じ」は小さい音の立ち上がりだけでなく大きな音を出す場合や、移弦のときに雑音を出さないようにする場合にも使います。

言い方を変えると、この「ねちっと感」を普段感じられないまま弾いているからA線がカリカリしたり、C線が底までちゃんと鳴らなかったりするんですよ~。