楽器をケース入れたら、その手ですぐにカギをかけましょう
前回は、「ハードケースに楽器を入れたら、立てずに寝かしておきましょう」というお話をしました。こちら>>
今回は、「楽器を入れたケースから楽器がこぼれ落ちた」という怖~いお話です。
もうウン十年前になりますが、ある合奏団の海外演奏旅行にエキストラとして参加した時のことです。
コントラバスやチェロなど大きな楽器は特別に梱包され、飛行機の荷物室の中でも特に注意を払われながら大切に輸送されます。その日も、現地の空港に人も楽器も無事到着。楽団員はそれぞれに自分の楽器を受け取り、税関と手荷物検査に進みました。
あるヴァイオリニストに検査の順番が回ってきました。検査は、自分の楽器ケースを検査台の上に置き、蓋を開けて中の楽器を取り出し、検査官に見せて、チェックを受けて終わりです。このヴァイオリニストの場合も、ここまでは特に何事もなく終わりました。そして、次の人に検査台を譲ろうとしたときのことです。
そのヴァイオリニストが自分の楽器ケースの横の取っ手を持ってケースを移動させようとしたとき、楽器が高い検査台の上から床の上に転がり落ちたのでした。ケースの鍵がかかっていなかったのに気づかずケースをぶら下げてしまい、蓋が開いて、まだケース内に固定されていなかった楽器がこぼれ落ちたのです。
カランカランと乾いた音を響かせながら、高級外車が買えるような値段のヴァイオリンは検査場の硬い床の上を転がりました。ご本人はもちろん、それを見ていた楽団員全員が凍り付きました。
前回のブログでも書いた通り、人は慌てると思わぬことをします。空港の税関・手荷物検査場はたくさんの人が列をなして並んでいるので、慌てますよね。早くしなければと思って、とりあえず蓋をかぶせただけにしてしまったんだろうと思います。
幸いなことにこの時の楽器は無事だったのですが、一つ間違えると大変なことになってしまっているところでした。
ここでさらに、怖~いお話をもう一つ。
先日の大阪北部地震での出来事です。
あるファゴット奏者が練習後に「またあとでちゃんと片付けよう」と、とりあえず楽器をケースに入れたあと蓋を開けっ放しにしていました。結局その日はそのまま寝てしまい、翌朝地震に襲われてしまったんです。開けっ放しだったケースの中の楽器の上に・・・・・。
幸い何も落ちてこなかった・・で済んだそうですが、「深く反省したわ」と言っていました。
「 (ガスを)点けたその手で、はい、換気♪」って、子供のころテレビのCMでよく聞きましたが、
「 ( 楽器を)入れたその手で、はい、施錠♪」をお願いしますね。
そして、もしもの時のために、チェロのネックをケース内に留められるならいつもすぐに留める癖をつけましょう。ケースをぶら下げたときに不運にも蓋が開いてしまっても、ケース内に楽器が固定されていれば、そのまま簡単に楽器が転がり落ちるということがある程度防げるかもしれません。