なぜ私の楽器だけ、弦がこんなにも緩むんですか
この寒い季節、楽器のケースを開けたら弦がベロンベロンに緩んでしまっているという悲劇がなぜ起こるのでしょうかというのが今日のお話です。
で、結論から言うと、「楽器ケースの中の空気が乾燥したために楽器に使われている木材も乾燥して痩せ、ペグとペグ穴との摩擦が減り、その結果ペグが緩むから」です。
ペグにはぜったい手を触れたくないという初心者の方には酷なお話ですが、アジャスターだけでなくペグも使って調弦ができるようになれば、弦はもう緩まなくなります。
ではどうして、先生の楽器の弦は緩まないのに、同じ乾燥した日本の冬を過ごすあなたの楽器の弦だけがこの季節になると緩むのでしょうか。
その理由は、あなたがペグを普段から触っていないからです。
あなたの楽器のペグを最後に締めたのはいつでしたか。ひょっとして夏頃ではないでしょうか。
夏は空気が湿っていて楽器に使われている材木は湿気を吸って膨らんでいます。
夏ならちょうど良く留まっていられるペグも、そのまま一度もねじ込み直されることなく冬を迎えると、空気の乾燥でペグが痩せ、ペグとペグ穴との摩擦が減り、ペグがそれ以上留まっていられなくなり巻き戻ってしまうので弦が緩んでしまうのです。
ところが、先生の楽器の場合は、チューニングの度にペグがその時の楽器の状態に合わせた位置に押し込み直されるので、ある日突然ベロンベロンに弦が緩むという悲劇が起こらないのです。
ペグが巻き戻ってしまう原因は他にもあります。
例えば急激な温度変化です。
寒いお部屋にあった楽器ケースを急に暖かい練習室で開けたり、レッスンに行くために凍えるような道を楽器を持って移動したあと暖かい乗り物に乗ったり。
急激な湿度の変化も原因のひとつです。
帰宅してエアコンをつけてお部屋を暖めると、急激に湿度が下がります。エアコンやストーブの温風が直接楽器に当たると、その部分だけ急激に乾燥します。
冬は楽器自体の温度湿度の変化が起きやすいのですが、そのたびに楽器に使われている材木は反応して動いているんですね。楽器が生きているのが感じられて愛おしいですね。(おっと。。。初心者の方には「ペグが緩むので悲しい」が本音かも。。)